2月24日、天皇陛下御在位30年記念式典。
政府主催の行事ながら、式典の趣旨に照らして当然、陛下のご意向も反映されている。例えば「歌声の響(ひびき)」。陛下がお詠みになった琉歌(りゅうか)に皇后陛下が曲を付けられた作品だ。それを沖縄出身の歌手、三浦大知さんが歌った。この琉歌の由来は、メディアでも繰り返し取り上げられた。皇太子時代の昭和50年に初めて沖縄を訪れられた時(ひめゆりの塔の前では反対派に火炎ビンを投げつけられた一方)、ハンセン病療養所を見舞われた際に、入所者の方々から歓迎を受けられた
(惨〔むご〕い差別を受けて来た入所者の皆さんにとって、お見舞いがどれだけ嬉しかったか!)。その折のお気持ちを詠まれた御作。又、国民代表の1人として、今も苦しみを抱える福島県の、内堀雅雄知事が特に選ばれてお祝いとお礼の言葉を述べた
(今年の歌会始で披露された「ひまわり」の御製〔ぎょせい〕を取り上げたのは、さすが)。ご在位の30年間、ひたすら国内の「分断」を乗り越えようと努めて来られた陛下のお気持ちに沿った人選であり、プログラムだった。式典が終わって、壇上を去られるに当たり、陛下は会場内を見渡しながら、名残(なごり)惜しそうに御手を振られた。
私には、あの時のお姿が最も深く印象に残っている。